凍りのくじらを読んでみた。(※ネタバレは無いですが、文章を書く都合上あらすじとかは書いてます。)

私はこの前読んだ本に救われた。

「凍りのくじら」という本だった。作者が有名なので本屋さんに行った時もかなり目立つところに平積みになっていた。(作者の書いた本が映画化されたものを金曜ロードショーで見たことがあったので覚えていた。)

 

その日私は疲れていた。体調が優れなかったし頭はぼーっとしていて本を集中して読める状態ではなかったかもしれない。でも事情があって、その本屋さんから一冊の本を選ばなくてはならない状況になっていた。

入口で平積みになっている本を買うのは、本屋の店員さんに買わされているようで好きではない。しかしあんまり読みたい本が見当たらなかったので入口で見つける本であればある程度面白い保証はあるだろうと思い、入り口付近を見に行った。

 

そうしたら、『あなたの人生の一冊になる!』というような大げさな帯に身をまとった分厚い文庫本が平積みになっていた。そのころの私はというと、ちょうど何事にもやる気が起きず自己嫌悪になっていた。帯にあった、『嫌いなのは自分』に運命を感じ、見つけて5秒でレジに並んだ。

 

 

結果、その夜のうちに読みほした。

自分と似た主人公だった。心の中でみんなの事を分析して、どのコミュニティに対しても主体性を持てないくせに、寂しくてみんなと関わっていたくなる。思っていることを場の空気を丸く収めたくて、自分を嫌いになってほしくなくて言わずに誤魔化す。現実感が薄くて、常に頭の中で違うことを考えている。最初から共感の嵐だった。

 

そんな主人公が、様々な出来事を経て感情をむき出しにして大切な人とむきあい、周りの人と素で関わることが出来るようになっていた。

 

なんだか生きてるなあって感覚がした。

 

最近ゲド戦記とか、かぐや姫とかのジブリ作品を見て、「生きる」ってなんだろうって考えることが多いのだけれどようやく、最近思ったのは、「人生がいちどきりであることを認め、受け入れたうえで自分の人生をよくするために自らの価値観で最善の選択をし行動をすること」だと思う。自分に嘘ついて、卑下して、っていうのは逃げていることでしかない。「本当の自分」が選択をして行動したら、失敗したときに、うまくいかなかったときに、言い訳できないからだ。

 

こういうような人生を送っているときっと毎日が憂鬱になってきて、そのうち自分の感情も分からなくなってしまうんだと思う。

だからちゃんと前を向いて歩くことが「生きる」ためには必要だと思う。人のために行動するのも結局は自分が嬉しいから。だからすべての行動は人生をよりよくするためのモノ、だと信じている。

 

自分と似た人が主人公になった物語はあまり読んだことがなかったので嬉しかった。物語の中で主人公が聞く言葉が自分を暖かく照らしてくれているように思えた。それと個人的に私は、この作品の中で描かれている場面が好きだった。色やにおい、温度や音などあらゆるものを想像してその中にいるかのように感じることが出来る。

 

是非悩んでいる人は読んでほしいです。あとがきに、「主人公はすぐさま読者の共感を得るタイプではない」と書いてありました(笑)

主人公に共感できない人も楽しめる物語なのではと思います。

 

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